定価2,800円のゲームに全世界が絶賛した3つの理由【HADES】

レビュー
こがめ
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どうもこがめです.

2020年(Switch海外版)で発売されて以降,全世界で好評を博している『HADES』.
日本語翻訳が完了し,遂にNintendo Switchでリリースされました.

本作は発売前からコアなゲームファンから絶大な注目を集めていましたが,日本でのリリース後も,その人気,好評っぷりは正にうなぎのぼりです.
海外にはゲームの評価をまとめているメタクリティックというサイトがあるんですが,そこには大手ゲームメディアが出したレビューを纏めているメタスコアというのがあります.
これが100点満点中スイッチ版,そしてPC版共に93点となっています.
また,メタクリティックにはもう一つユーザが自由に投稿できるユーザースコアというのがあるのですが,10点満点中,スイッチ版が9.0点,PC版が8.9点となっています.

また,この93点というのは2020年発売されたNintendo Switchのゲームでは最も高く,2020年のゲームの中で最も評価された作品であると言えます.
ジャンルは異なりますが,『あつまれ 動物の森』や『Xenoblade Definitive Edition』,『ピクミン3 デラックス』等を抑えてのトップです.

本作は所謂インディーゲームに分類されますが,並み居る有名ソフトメーカーや数々の任天堂作品を抑えた堂々の一位ということで,日本語対応を待ち焦がれていたプレイヤーたちにとっては遂に来たという感じでした.

しかし,インディーゲームということもあり,知名度がそこまで高くなかったり,そもそも名前の知らない会社が作ったゲームって本当におもしろいの?と疑問に思う方も多いと思います.

そこで『HADES』の何が人気なのか,何がすごいのか,レビューとして解説していきたいと思います.
ちなみに私は一旦クリアし終えましたが,プレイ中は「もう1回,もう1回」と何度も遊んでしまい,やめ時を逸してしまうほどでした.
ストーリーネタバレなしでお送りしますので,是非最後まで見ていって下さい.

 

HADESとは

まず,本作がどんなゲームなのかを解説していきましょう.
ジャンルはローグライのクアクションゲームです.
「ローグライク」という言葉をあまり聞いたことがない人もいるかもしれませんね.
代表的な作品を挙げると,風来のシレンシリーズやトルネコの不思議なダンジョンシリーズ等です.
中でも最もやり込み要素の強いプレイモードとしては,Lv1の状態で装備を何も持たずにダンジョンに入り,その道中で入手できる様々な武器やアイテムを駆使して目的地を目指していくというものです.

遊ぶ度にダンジョンの形状や出現アイテムが変わったり,負けてしまうと全てのアイテムを失い,ゼロからやり直しというシビアな側面から,中毒性が非常に高く,”100万回遊べる”という風に呼ばれます.
風来のシレンにしてもトルネコにしてもターン制のコマンド形式,それに対し『HADES』はアクションですので,戦闘方法は異なるものの,核となるローグライクのゲームシステムは基本的に同一です.

ただ本作はローグライクジャンルの中でも革新的な要素が多く,それらが本作最大の魅力と言っても良いと思います.
では,本作の魅力,何が革新的だったのか,3つに絞ってお伝えしていきますが,まずは最初に本作の基本的なゲームシステムを整理しておきましょう.

 

HADESのゲームシステム

ローグライクのジャンルでは,ダンジョン内で様々なアイテムを入手し,それを駆使して進んでいく,いわば現地調達と現地消費です.

風来の試練やトルネコでは武器やアイテムを入手し,それを壺に収納して,時にはお店で売り買いして,その時々に必要なアイテムを取捨選択していきます.
ただ基本的に入手できるアイテムはランダムなので,欲しいアイテムが手に入らないとなかなか道中が辛かったり,場合によっては,特定の階層までにそれがないとほぼ詰みという状況にもなり得ます.
ある程度運要素も強いと言えるでしょう.

では本作『HADES』ではどうなっているか,整理していきます.
プレイヤーであるザグレウスが使用する武器はダンジョンに入る際に1つ選択,それをクリアするまで,もしくは負けるまで使い続けます.
武器は最大6種類あり,どれも固有の使い方で一長一短,好みによって選択できます.

そして得ることができるアイテムは大きく2種類,1つはHP上限アップや武器性能アップなど,プレイヤーの基本性能を上昇させるもの.
もう1つはオリンポスの神々の力を授かり,特殊な攻撃が可能になるもの.

1つめは言葉の通り,HPの最大値を上昇させたり,武器の基本的な性能を更に引き出し,攻撃力や攻撃範囲,攻撃スピード等を上昇させるものです.
本作ではレベルの概念が存在しませんので,敵を倒してレベルアップさせ,ステータスが上がるということはありません.
従って,これらの効果を得ることでのみ上昇させることができます.

もう1つは,オリンポスの神々の力を授かるものです.
これは”功徳”と呼ばれるもので,習得すると,神々の特徴に沿った恩恵を受けることができます.
例えば,ゼウスの”功徳”を得た場合,攻撃した際に雷撃が追撃で発生したり,ダッシュ行動を行った際,周囲に雷を発生させたり,といったものです.

そして更に特徴的なシステムとしては,これらのどれを入手するか,都度選択していく形式となっている点です.

ダンジョンは1フロアごとに進行していき,そのフロアの全ての敵を倒すとクリア,次のフロア,次のフロアへと進んでいきます.
そしてフロアをクリアした際,”次に入手できるアイテムの種類”を選択することができます.
多くの場合,二者択一で提示されたり,場合によっては三者択一となります.
従って,アイテムの完全ランダム入手というわけではなく,提示されるものの中から,必要なものを取捨選択していくという形式になっています.
これにより,状況に応じて選択でき,且つ確率的に欲しいものが手に入る可能性が上がります.

また,功徳を入手する場合には,三択となり,これまた欲しいものを1つ選択することができます.
功徳は神の種類ごとにおよそ20個程度存在し,またレアリティも設定されていますので,欲しいものが出るかどうか,高レアリティのものが出るかも運要素ですが,3つ提示されれば,それなりに欲しいものが手に入るバランスになっています.

更に,得た”功徳”はランクアップのアイテムを選択することで強化することができます.
従って,プレイヤーはフロアをクリアする毎に,次にどんな”功徳”を得るのか,基礎能力を上げるのかを選択,どんな”功徳”や能力アップを選ぶのか,常に取捨選択しながら進んでいきます.

またその他にも,入手できる”功徳”の種類を回数限定で固定できる”アクセサリー要素”があったり,持ち帰ることでダンジョン挑戦における様々な恩恵を受けられるアイテムも存在したりと,常に何が出るか,何を選ぶか,も楽しみの一つとなっています.

 

負けるメリットがデザインされている

ローグライクのゲームというのは,基本的にクリアするか,途中で負けてしまうか,そして負けてしまえばゼロからやり直しというのが,醍醐味であり,人を選ぶ要素でもあります.

とは言っても,やはり負けてしまった時の喪失感は大きく,特にクリア目前で倒れた時の絶望感はもう言葉にできません.

ただ本作は,その喪失感が絶妙に軽減されるデザインになっています.
その最も大きなものとして挙げられるのが,負けるとストーリーが進行する,という点です.

本作はゲームスタート直後,軽いイントロダクションが終わると即座にダンジョンに入り,戦闘を繰り広げることになります.
そして,遊びながら戦闘のルールやコツなどを身に付けていきます.
従って,ほぼあり得ませんが,ゲームを開始した直後にそのままゲームクリアとなる場合も可能性としてはあり得ます.

一方で,本作にはメインストーリーとなる物語も存在しますが,それらはダンジョンで負けなければ,ほぼ進行することはありません.
逆に言えば,負けることでのみストーリーが少しずつ進展していくことになります.

つまり,勝ち続けてクリアできれば気持ちいいですし,負けたとしても,ストーリーが進行し,有意義な時間に変わります.
非常にシンプルなデザインですが,今までありそうでなかった仕掛けです.

過去の多くのローグライクゲームでは,ダンジョンを踏破していく毎にストーリーが進行していく仕組みになっている為,クリアするまで,ストーリーは止まったままとなり,ストーリーの先も気になるという方にとっては,クリアしなければならないという条件を億劫に感じる場面もあったかと思いますし,クリアするまでに時間がかかりすぎて,そもそもストーリーを忘れてしまったということもあり得ますね.

またプレイするユーザーがどれくらいの挑戦回数でクリアできるのか,どれくらい負けるのかを事前に予測して,ストーリーの進行も組み立てなければなりませんので,簡単そうに見えて,いざ作ろうと思ったらかなりハードルが高い,そんなデザインです.

この仕組みがあることで,もし負けたとしても,「まぁストーリーの続きが見れるからいっか」と気持ちの切り替えが比較的容易,ストーリーを一通り見終わった後は「よしじゃぁまたやるか」とこのループが延々と続くことになり,それが絶妙な中毒性を発生させていく.
正にローグライクで躓きやすい点を絶妙に払拭している.

 

負けても持ち越し要素がある(選択制)

負けてしまうと全てを失うというのがローグライクの基本で,風来のシレンやトルネコで言えば,武器や盾,その他草や杖,壺等は全て失われてしまいます.
本作も同様で,”功徳”やお金,HP最大値上昇など戦闘で使用するものは全てリセットされます.

ただ一部のアイテムに限っては負けてしまっても持ち帰ることができます.
例えば,主人公の基礎攻撃力や復活回数を上げる為の”闇の結晶”,様々な恩恵をアンロックする”冥府の鍵”ダンジョン内の休憩施設等の増強に使う”宝珠”神々との関係性を上昇させる”葡萄酒”等です.

これらのアイテムもダンジョン内で功徳等と同様に,選択して入手することができます.
従って,始めたばかりの方であれば,最初にこれら持ち越せるアイテムを優先的に入手しておくことで,負けても恩恵を多く受けられるようにすることができ,その結果,精神的な負担は大きく軽減されますし,その後挑戦する際より有利に進めることがでたりします.

この点は,ローグライク初心者は勿論,ローグライクに慣れているプレイヤーにとっても非常にメリットが大きいです.
「今回は武器の使い方を練習しようかな」とか,「どんな敵が出てくるか下見をしよう」という場合には,功徳よりも持ち越しできるアイテムを優先的に入手していけば,負けたとしても以降のプレイ時に非常に有利になります.

負けた時の喪失感軽減だけでなく,その時々に応じて異なる目的設定が可能な為,遊びやすく,色々なプレイスタイルを取ることができる点は非常にプレイしやすいです.

ローグライクでは毎回毎回が「絶対にクリアする」というどうしても高プレッシャー状態になりがちなので,色んな目的で挑めるのは非常に良い仕組みだと思います.

 

ランダム性と選択のバランス

フロアの敵を全滅させる毎に次に得たい能力を二択,ないしは三択で決定し,能力アップや功徳の獲得を行うという点も非常にプレイヤーに柔軟性とリプレイ性を与えます.

先程軽く説明しましたが,もう少し詳しく説明します.
例えばこのように,フロアの敵を全滅させると,アイテムがドロップするのですが,このアイテムというのは,前のフロアをクリアした際に,選択したものがドロップしています.
このフロアでアイテムを獲得した後にも,2つのアイテムから1つを選択し,次のフロアをクリアすると選択したものが入手できるという仕組みになっています.


従って,ランダムに落ちているアイテムをただ拾う場合と比べ,常に選択しながら必要なものを入手していくことができます.
単純にランダムで与えられる形式と比べると他のものを選択する余地が残されている為,「このアイテムは強いけど今じゃないんだよな」とか,「今更コレが来てもな~」という状況に陥り辛いと感じました.

またプレイヤー自身が現状に対して先の状況を予測しながら選択していくことができる為,ほしいものが出ないからと言って「はい,運ゲー」と終わらせるのではなく,「ほしいものが出ないなら,出ないなりにどう組み立てていくか」という,先読み,状況打開の思考過程とセットで楽しめる設計になっていると感じました.

このあたりが絶妙で,ただ与えられるのではなく,自分でドロップするものをある程度選んでいける点が非常にプレイヤーに中毒性を持たせる要素だと思います.


ということで,以上3点解説しましたが,その他にも,ギリシャ神話をもとにしたストーリーですがベースにあるのは意外にシンプルで分かりやすいテーマの物語だったり,緻密に行われた高い精度の日本語翻訳,クリア後のやり込み要素など,魅力はたくさんありますので,是非一度プレイしてみて下さい.

 

難点

ではもう一つ,いくつか気になる点についても挙げておきます.

まずは,武器や功徳等,獲得する能力の固定化についてです.
功徳については10種類×20種類と大量に存在し,クリアするまでに習得できるものは,多くとも20個程度と限られることがほとんどです.
また武器は全6種類ありますが,操作はシンプルですがそれぞれ使い勝手が異なる為,使いこなすには慣れも必要です.
従って,クリアすることだけを目標に据えるならば,同じ武器で狙った功徳,もしくは似たような効果を発揮する功徳を積極的に厳選していくようなプレイになりがちで,実際私もそうでした.

またもう一つは,”回避ゲー”になりやすいという点です.
HPの回復手段が限られ,且つHP上限もそこまで高くないため,敵の攻撃に当たらないことがプレイング上かなり重要です.
従って,近接系武器はダメージ被弾率が高まる為,敬遠されやすかったり,遠距離系の功徳が比較的楽になりやすいです.

私の場合は,盾,というかほぼブーメランの武器で回避に専念しながらその合間で遠距離攻撃,更に追尾系や設置系の功徳で攻めていましたし,最初のクリアではそれがかなり安定するかと思います.

これらの点はよりやり込んでいけば変わって来るかもしれませんが,ある程度固定化される可能性は高いです.

勿論,前回と別の武器を使うことでおいしい特典が得られたりと,そのあたりはゲームバランス的に考慮されてはいますので,色んなものを試すことを個人的にはオススメしたいですが,ある程度慣れてきて,特にクリア一歩手前までくるような段階においては,同じ戦法を取る方が確実だという判断になりがちかなと感じました.

 

さいごに

全世界で好評を博し,遂に日本語ローカライズされた『HADES』.
圧倒的なやり応えと中毒性,状況に応じて常に迫られる取捨選択と絶妙に演出,調整された喪失感の軽減.
ベテランローグライクプレイヤーは勿論,初心者でもとっつきやすく,初めてのローグライクにはもってこいの作品と言えます.

インディーゲーム,且つ洋ゲー臭の漂う雰囲気でもありますので,見た目で敬遠されていた方もいるかもしれませんが,是非手に取ってみて頂ければと思います.
ちなみにダウンロード専売で定価2,800円とお値段的にもかなり手頃かと思います.

ただ非常に完成度が高く,革新的なローグライクですので,この次に手を出すローグライクのハードルが上がってしまうことが一つの懸念ではありますが,そのあたりも含めて,色んなゲームに触るキッカケの一つとなれば嬉しいです.

ということで今回は以上となります.
このサイトでは,1人用ゲームに特化して,発売前情報のまとめやプレイ感,レビューをまとめていますので,よろしければ定期的にチェック頂ければ嬉しいです.
それでは読んで頂きありがとうございました.

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