頼むから毛嫌いせずにプレイしてくれ 最優秀賞受賞のSwitch屈指のアドベンチャー作品【バディミッション BOND】

レビュー
こがめ
こがめ

どうもこがめです.

今回は『バディミッション BOND』の魅力,レビューをまとめていきたいと思います.

本作は任天堂とコーエーテクモゲームスがタッグを組んで誕生した完全新規タイトル.
その抜群の緩急と謎が謎を呼ぶシナリオ,中盤から終盤への緊張感と怒涛の展開に加え,物語のボリュームも非常に膨大,尚且つ王道でスッキリと綺麗に描き切るストーリーは,2021年のADV作品を代表すると言っていいと思います.

また本作は絆がテーマでもあり,人物同士の繋がり,関係性,もしくは因縁のようなものも含めて様々な角度から描かれており,その言葉の限りを尽くしたと言えるテキストは,声優陣の演技との相乗効果で一文字一文字に込められた力を感じます.

ただ,売り上げ的にはあまり目立った数字は記録されておらず,水面下でジワジワと売れているような本作,その原因の考察なども含め,魅力,レビューを様々な観点からまとめていきます.

尚,ストーリーに関するネタバレはなし,映像も具体的な説明に必要なシーンを除いては体験版の範囲(+PV等)に限定していますので,これからプレイされる方も安心してご覧ください.

 

どんなゲームか

『バディミッション BOND』
ジャンル:アドベンチャー

本作は2021/1/29に発売された完全新規の作品で絆をテーマに主人公四人を中心とした物語が展開されます.
ゲームシステムは大きく3つに分けられ,物語を追っていくストーリーパート,敵のアジトに忍び込んだり,宝を盗んだりする潜入パート,その潜入をスムーズに成功させるための捜査(聞き込み)パートです.

そしてこれらはタイトル通り,”バディ”で行うことがほとんどで,4人の主人公たちの組み合わせを選んで様々なミッションをこなしていきます.
アドベンチャーという作品ジャンルの性質上,ストーリーは一本道に進んでいきますが,シナリオの随所には選択肢が散りばめられており,ストーリー中の選択肢や捜査,潜入でのバディの選択とそのルート最適化等,ストーリーへの介入の余地がふんだんに盛り込まれています.

またシナリオも王道であり,清々しい展開が多く,白黒はっきりと付ける,全てを綺麗に描き切る,そんなスッキリと全てを片付けてくれる気持ち良さも魅力です.
それらは独特の表現方法で描かれ,漫画のようなコマ割と表示の順序付け等は,漫画でもなくこれまでのADVゲームのようでもない,新しい試みも見受けられます.

その他にも様々な特徴はありますが,それら細かい解説なども含めてまずは良い点についてまとめていきたいと思います.

良い点

 抜群の緩急と謎が謎を呼ぶ展開

謎が謎を呼んだ結果,ストーリー序盤から結末まで,そして更には隠し要素に至るまで,休むことなくプレイし続けたくなる程に濃い密度で怒涛の展開が本作には用意されています.
そしてそれを実現するため,様々な趣向が凝らされていますが,やはり一番に挙げられるのは作風や演出,一章ごとの区切りなど,プレイヤーを飽きさせない作りにあると感じます.

本作は全体を通して漫画のようなデザインが用いられており,重要なシーンやイベントシーン等は漫画のコマ割と吹き出しによるセリフで演出されています.
ただこれは,漫画とは大きく異なり,1コマ1コマで非常に躍動感を感じられるようになっていて,例えばゲーム開始冒頭のシーンを例に挙げると,背景とキャラクター,動きを付ける効果線やセリフの吹き出しなど,それぞれが映し出されるタイミングや動きが付けられており,本来の1ページ分で感じられる以上のスピード感や盛り上がりが効果的に演出されています.
重要なイベントの多くでこの演出手法が採用されているため,独特の没入感を味わうことができます.

またその他にも漫画テイストとしては,章の区切り方も絶妙で,一章ごとの終わりには必ずと言っていい程,大きな引きが設けられていたり,その章を始める際には扉絵のようなそのお話を象徴するかのような一枚絵が登場し,しかも敢えて白黒で描かれていたり,一章ごとがそれぞれ漫画の1巻,2巻のような
表紙と漫画サイズのようになっているなど,全体として漫画を意識された,そして漫画とゲームが融合したデザインになっています.

勿論これらは体験版の範囲でも存分に発揮されており,特にミッション1(2話目)では,本作における重要な部分が多く語られており,程よく謎を残しつつ,劇的な展開を彷彿とさせることが感じられます.
本作の物語のメインとなる舞台はミカグラ島と呼ばれる離島,体験版中ではそこに赴くきっかけのうち一つが描かれていき,且つ本作の世界観や大きさを描くためのエピソードが展開されます.

しかし,ミカグラ島に到着した以降は,その島を中心とした物語が展開,世界の広さを描きつつも,一つの島にフォーカスされるため,話自体のスケールを大きくしつつも,地に足の着いた,膨れ上がらない程の物語が展開します.
特に,ミカグラ島は世界の他の国とは異なり,独自に発展し,独特の文化を持った島国で,どこか日本を思わせるような,それでいて全く異なるような,閉じた国としてのオリジナリティが感じられ,伝統的な食べ物や文化,伝承と民謡等,フックとなる趣向が多数盛り込まれ,一方で,古くからの歴史と確執,異文化摩擦等もあります.

ただこれらはただの設定としての情報ではなく,ストーリーの随所で絡んでくるため,これら理解する,ミカグラ島を理解するというのも,本作を楽しむ上でのポイントとしてデザインされていることを感じます.
特に序盤は新しい謎と新しい場所,新しい人物や事件など,怒涛の展開とその緩急,加えて程よい箸休めも挟みつつ描かれ,一方で後半はそれまでの様々な情報を駆使して革新に迫っていき,それでいて意外とまだまだ話が続いていくという嬉しさ,プレイしていて,プレイし終えて最高の瞬間だと思います.

伏線についても恐らく回収されなかったものは見当たらず,にも関わらず,無理やり回収されたものはなく,全てに納得がいく,気持ちよく回収される,それでいて驚きの結末やハッピーエンド,悲しい結末だけど救いがあるのかないのか,いずれも辿り着いてよかったと感じる結末です.
またストーリー全体が”絆”をテーマにしていること,そして主役キャラが全員男性であることもあり,恋愛展開はストーリーの核にはなっておらず,存在するものの少なめであり,くどくない程度,且つ最終的に恋愛感情でオチを付けるということもないため,その手の展開が苦手な方にはかなりプレイしやすいと思います.

それに加えて,全般的にご都合主義的な展開だと感じる場面がほぼなく,主要キャラたちがズバ抜けた能力を持っていることを除いては,ストーリー展開に無理が生じない,しっかりと行動や言葉に背景や意図が用意されている,例え王道なセリフであってもそのセリフが発せられるに至った経緯も含めて描写されるなど,とにかく丁寧に描かれていきます.

勿論,一部,先の展開が予想できないこともないですが,例えそうだとしても,そこに辿り着くまでの過程がどう描かれるのか,登場人物たちはどういう思いや考えでそこに至ったのか等,寧ろその過程の方に重きを置いていると思えるほど程,人物や物事への描写について一点の漏れも感じられず,徹底して言葉を尽くしているのが感じられます.

そしてその総決算としての最終ダンジョンとその仕掛けの数々,ダンジョンに辿り着くまでの捜査,思いもよらぬところで泣いてしまいました.

 バディの絆,あらゆる人物の背景とその魅力


本作のキャラクターたちの見どころを一言で伝えるならば,それはキャラクターたちが生き生きと躍動している点だと言えます.

特に主役の四人の人物たちは,声優の演技が素晴らしいことは勿論,ストーリーに合わせてキャラクターが喋っているというよりも,キャラクターが喋った結果ストーリーが組み上がった,そんな印象を受けます.
説明的な会話は必要最低限に留めつつも,それぞれの人物像や意外な繋がり,因縁等,ありとあらゆる角度からそれらが描かれ,それらのほとんどが会話の中で明らかになっていく,そして結果的にそれらの中に無駄なものが一切混ざっていない,まさに神業だと感じます.

勿論,出会いや序盤のエピソードこそ,多少の予定調和感があるもののそこからの展開の多彩さと
最終的な着陸のさせ方,鮮やかさはクリア後に小一時間空を見つめながら余韻に浸れる程です.
その中でも本作のテーマである”絆”については,非常に丁寧に描かれている点が素晴らしく,全体を通して「結局,絆かよ」的なパワーで押し切るものではなく,人物同士の関係性を様々な角度や会話劇でこれでもかと描き切る,会話パート以外の捜査パートやサイドストーリーでも肉付けしていく,内容によってはサブキャラクターたちの存在も含めて語り尽くす,そしてその結果の絆であり,人物間でその形も変容する,この丁寧さと有機的な繋がりは本当に素晴らしいです.

また一見ストーリーの本筋とは一歩離れるような人物同士の関係性ややり取りについても,それ単体で魅力的に仕上がっており尚且つ,メインのストーリーをまた別の角度から楽しめる,全体としてのまとまりと深みが醸成される,そしてそれら含めて最終的に結びついていく,まさしく走馬灯のようなものだと感じます.
一方でこれらは難解なシナリオや言葉が用いられるものでもなければ,深い推理や記憶力が求められるものでもない,順を追ってストーリーを進めていくだけでも十分に理解して楽しむことができるようになっています.

プレイした誰もが作品を存分に味わえる,そんな意識が随所から感じられる一方で,膨大なシナリオを躓くことなく,そして緊張感を途切れさせることなくそれが実現されている,ちょっとした会話,からかいの言葉の中からも色んな角度から描かれる中で様々な意味合いを持ってくる,そんなふうにプレイヤーが読み取れるよう丁寧に施された描写は,一言一句捨てるテキストが存在しないと言い切れます.

その他,ストーリー上の関わりが強いサブキャラクターたちも魅力的で,物語が展開するための役割に留まらず,パーソナリティやバックボーンもしっかりと語られます.
特に女性キャラクターたちは印象的で,スイやナデシコ,コズエと言った,若い女性から老人まで,それぞれの個性が確立されていて,人物として立っていることに加え,一般的によく用いられるキャラクター表現の範疇に留まらない,一歩引いて,それでいて存在感がしっかりと残されている,そんなありがちではないキャラクターたち,一癖も二癖も魅力が表現されています.

また比較的モブキャラクターのように見える人物たちも,登場シーンこそ少ないものの,それぞれに役割が実現されていたり,後述のサイドストーリーで深堀が成されたりと,単なる情報提供キャラ,便利キャラに留まらない,役として生きていることがしっかりと感じられます.
アドベンチャーとしてのストーリーの完成度に加え,それを織り成す様々な人物たちとその関係性,更には登場人物ほぼ全てに個性が与えられる,そんな全方位的に練りあがった作品がここにはあります.

 

 捜査パートと脳内人物相関図

敵アジトへの潜入や宝石の奪取等,主人公たちは数々のミッションをこなしていきます.
そしてその中で重要となるのが事前の準備,隠密に,そしてスムーズにミッションを達成するため,関連する場所で入念な聞き込み捜査を行います.

捜査パートの目的はシンプルで,ミッション達成のための潜入を成功させるべく,その潜入ルートの確立と突破に必要な情報収集です.
ただ,総当たりで闇雲に話を聞けばよいわけではなく,聞き込み対象に対して適切な布陣で挑む必要があります.
聞き込みは基本的に二人一組で行うため,四人から二人を選抜することになり,更には対象との会話も,そのうちどちらか一人が行う形式となっており,適切に選択できれば聞き込み成功,必要な情報を得ることができます.

従って,四人から二人を如何に的確に選ぶか,そして二人のうちどちらが聞き込みをするか,その組み合わせのゲーム性が聞き込み捜査の核となっています.
そしてこの選択に関わる手掛かりとなる情報は作中の随所に散りばめられており,それを如何に見つけ出し,もしくは脳内から引っ張り出して適切な見極めと選択をするかが,ストーリーとも連動された魅力となっています.

手がかりの形式は大きく分けて2つで,一つは聞き込み場所の情報が一,二行程度で述べられており,その中でも特にオレンジ色で示された言葉は,直接的なヒントとなっていて,誰に聞き込みを行わせるかの手掛かりになっています.
ただ,聞き込みはラウンド制になっていて,1回の聞き込みで移動できる距離が限られているため,どのバディで,どのルートを通り,誰に聞き込みさせるか,という予想,計画を組み立てる遊びがデザインされています.

そしてもう一つのヒントは作中のあらゆる会話の随所に散りばめられています.
特に聞き込みの中では相手から情報を引き出すために質問が投げかけられますが,その質問の全ては作中のそれまでの会話の中にヒントが隠されています.
代表的なものは会話中のオレンジ色の文字で,これがたいていの場合は手掛かりになりますが,それ以外の会話の中や人物同士の関係性そのものが質問への足掛かりとなることもあります.
従って,直近の会話中にヒントがあるものもあれば,ゲーム全体を通して導き出されるものもある,膨大なテキストの一言一句漏らさずに丁寧に読んで咀嚼していくことが重要になります.

ただ,それらは単なる断片的な情報を片っ端から記憶するようなものではなく,特定のエピソードや人物像,関係性に紐づくものであるため,覚えておくというよりも,ストーリーや一枚絵,キャラクターと連動して一度読めば芋づる式に呼び起される,という方が適切かもしれませんし,漫画テイストであることの一つの意義であるとも感じられます.

そんな体験の予兆のようなものが序盤から感じられるため,積極的にテキストを熟読する,覚えてしまう程で,クリア後の追加要素も含めた私の40時間のプレイはあっという間に過ぎ去っていきました.
しかし,捜査の進め方,そして攻略自体は難しいものではなく,便利機能や救済措置が設けられています.
例えば,聞き込み中や質問の最中などでも,常に捜査情報を見ることができたり,質問へ回答ができないときでも,過去を回想することができたり,間違った回答をしてもヒントが得られたり,ゲームオーバーにはならないため,初見でも恙なく進行できる難易度設定になっています.

ただ,それらの中にはペナルティが課せられるものもあり,章のクリア後のサイドエピソード解禁に影響するものもありますので,可能な限りノーペナルティでクリアしたくなります.
そうなった場合には,これらを加味した上で,それまでのプレイで得た知識,記憶を総動員して,如何に少ない手数で最大限の聞き込みをこなすかに頭を捻る,そしてそれが実現できた時には,あたかも人物相関図が脳内に形成されているかのような感覚と聞き込みの手練れになったかのような充実感が訪れます.

 

 必ず唸らすサイドストーリー

メインストーリーを一定条件を満たしてクリアすると特典としてサイドストーリーが解放される仕組みになっています.
これはヒーローゲージと呼ばれる主人公のパラメータで選択肢や行動内容に応じて章単位で増減し,章によって,そしてクリアした際のゲージの状況に応じて,解放される内容と数が変化します.

多くの場合はクリア時のゲージの量に応じて最大S評価のクリランクが決定されたり,聞き込みを特定のバディで行うことが条件となっていたり,章を開始する際にこれら条件をある程度確認することができます.
ただこれらの多くはあくまでやり込み要素,コレクション要素の一種で,一部を除いては本編の進行への影響はなく,本作が好きになったら,より細かいことが気になったら解放してみるという程度でも十分な機能になっています.

しかし,その内容も多岐に渡り主役たちの過去のエピソードや本編では描かれなかった行動とその理由,サブキャラクターやモブ的な人物たちの掘り下げ等,様々な視点から本作をより楽しむことができます.
そのため,本当の意味での”おまけ”としてのエピソードは非常に少なく,読めば必ずと言っていい程,
メインストーリーに関わることが明らかになったり,より深く理解できる,別の角度から覗ける,余韻に浸れる等,嬉しいことが待ち構えています.

勿論,その文量も多く,本編の1シーン程度の尺で語られ,本編に入っていてもおかしくない内容,本編が長くなり過ぎるのでサイドストーリーという枠を用意したと感じられる程です.

 

悪い点

では続いて悪い点についても述べたいと思いますが,中には悪いというよりは,好みの問題や,ゲームのジャンル,システムの性質上,仕方がないようなものもありますので,その前提で整理したいと思います.

 

 アクションパートについて


ストーリーパートや捜査パートなど,本作のメインとも言えるテキストを中心としたゲーム性は,正直文句をつける方が難しい程までに完成度の高さが感じられます.
ただ,本作におけるゲーム性の一つのポイントとも言える3Dアクションである潜入パートは,他のパートには二,三歩及んでいない印象を受けます.

ポイントはいくつか挙げられますが,やはり目立つのはできることが極めて少ない点だと思います.
3D空間の中でできることは移動と特定のオブジェクトに触れるのみで,移動に関しては”歩く”と”ダッシュ”に区別はありません.
歩くのみでも移動が遅過ぎるとは思いませんが,一般的な3Dアクションに慣れている方にとっては,なぜダッシュ機能がないのか疑問に感じる方も少なくないと思います.
また敵と遭遇して戦闘になることもありますが,戦闘システムは敵の攻撃タイミングに合わせてボタンを押す非常にシンプルなシステムになっています.

このシステム自体はアクションゲームとしてよく用いられるものですが,これ単体で面白いかどうかは置いておいて,これがアクションパートのみで採用されているものであり,他のパートとも噛み合いが悪く,ゲーム全体から見てかなり浮いていると感じます.
加えて,ボタンアクションが失敗した際には成功するまで何度も繰り返させられたり,その度にヒーローゲージが減少してしまうのは,なかなかに辛い体験となってしまうかもしれません.
一方で決してその難易度が高過ぎるわけではなく,失敗した際には簡単になったり,ヒントが出たりするなど,多少の救済措置が施されていますが,アドベンチャーのゲームの一部として親和性が高いかというと少し疑問を感じますし,こと敵のアジトへ潜入した後のボスとの決戦という場面を考慮した場合にふさわしいシステムかというと何らか別の手段をとって欲しかったと感じます.

勿論,開発陣の意図は読み取ることは出来ませんが,全編を通して潜入パートに入るまでが最も重要であるとも感じましたので,私にとっては,これが劇的に本作の評価を落とす要因とまでは言い切れませんでした.
本作がどこに力点を置かれたものかは,概ね明らかですし,ADV作品としてはやむを得ないバランスとも言えますが,もう一工夫欲しかったところですし,やはり潜入していよいよ大詰め,という場面でこのボタンアクションというのは少し拍子抜けしてしまう方も少なくないと思います.

 

 体験版について

本作には無料の体験版があり,合計2つのエピソード,ストーリーで言うと,1話と2話,ミッション0とミッション1を遊ぶことができます.
場面的としては,本作のメイン舞台となるミカグラ島に出発するよりもだいぶ前までであり,当然ながら最序盤の展開で,全体のうちの数%程度といったところです.

ただ本作のゲーム性としては一通り体験できるようになっており,ストーリーパート,捜査パート,潜入パート,すべてに触れることができます.
しかし,その物量は当然ながら色々と少なく,本作の魅力を存分に味わえるかというと,大いに疑問が残ります.
それは当然の話で,アドベンチャーというジャンルにおいて,最序盤だけプレイしてどれくらい楽しめるか,作品として冒頭にどのような展開を用意するか,合計2話で残りの膨大なストーリーの魅力を少しでも感じてもらえるか,なかなかの難題だと言えます.
勿論,本作においてもそれらの工夫は随所に見られ,体験版の中に漫画テイストの演出を凝らしたり,劇的なシーンを挿入したりと,見どころ,趣向を可能な限り抑えられるようになっています.

ただやはり,体験版,ADVという性質上,ジレンマのような物を感じます.
勿論それは製品版としてプレイした身からしてみればそう思えるのかもしれませんが,やはり本作の膨大なシナリオを前にしてみれば,体験版の範囲だけで良し悪しを判断するのはなかなかに勿体ないと感じざるを得ません.
特に,先程も述べた,潜入パートのアクション性についても体験版の中でも触れる為,その粗さに過剰にが行ってしまった結果,製品版へ進むことを見送る理由を与えていると言えなくもありません.
まぁそれが体験版の本来の役割として正しいという側面というのも勿論ありますので,なかなか難しい問題だと感じます.

 

 作画,主人公四人について

『アイシールド21』や『ワンパンマン』を手がける村田雄介氏がキャラクターデザインを務めた本作,一定の話題性も期待できるかと思いきやさほど高くはなく,寧ろ前評判に反してあまり評価は高いものではありません.
村田氏の作品にそこまで詳しくはないので詳細の推測は難しいですが,全体的な作画については,2021年時点の作品としては,若干の古めかしさが残る印象を受けます.
勿論すべてがそうというわけではありませんが,特に主人公たち4人については,その立ち絵などからは特にその雰囲気が醸し出されています.

公式情報が少ないためここからは推測ですが,要因として考えられるのは,開発期間の長期化(作画はだいぶ昔のもの),敢えての作画,作画の主担当者などが考えられます.
また,主人公たち四人が全員男性キャラというのも,一定の誤解というか,認識齟齬を招いている可能性があります.
ゲームパッケージはルークとアーロン,主人公四人のうち二人で飾られていますが,いずれも男性キャラ,またいくつかのPVについても女性キャラをピックアップしたものも一部ありますが,主人公四人,もしくは二人ずつのバディにフォーカスされたものが多くを占めます.

また彼らの見た目やキャラクターの雰囲気も女性向けゲームに近しいものと感じる方も少なくないと思います.
従って,現代のたいていの作品と比較すれば,パッケージには女性キャラが一人もおらず,主役たちも男性キャラのみで,女性向けゲームでないにも関わらず,かなり渋い仕上がりだと言えますし,一方で,女性向けゲームだと勘違いしてしまう方も少なくないかもしれません.

まぁ,ストーリー的には全員男性で全く違和感がない,というかそれでこそのよさがあるので,全員が男性である必然性はありますし,本作のメインが恋愛ではなく,絆となっているので,それを成立させている重要な部分でもあり,またプレイし終わった身からしてみれば,男性四人以外ありえないとも感じます.
まぁ個人的には性別を問わないゲームとしては変に媚びておらず,女性に強めにリーチできる余地を残しているという,なかなかに攻めたスタイルであるとも捉えられますので,この作品への想いのようなものも感じられます.

 

 サイドストーリーについて

丁寧で奥深くまで掘り下げるそのストーリーの密度とそれをスムーズに味わえる難易度設定は,本作をプレイする多くの人がエンディングまでたどり着け,物語を存分に堪能できるデザインになっています.
加えて,サイドストーリーの内容自体も充実している為,すべてをコンプリートしたくなるものになっています.

しかし,そのコンプリートのためには,若干のハードルの高さ,多少煩わしい点が一部存在します.
サイドストーリー(バディストーリー含む)の解放には条件があり,章ごとに一定以上のクリアランクを達成する,もしくは特定の組み合わせで”捜査”を行うことが必要です.
ただその開放条件はその章を開始する前にヒントのような形で確認はできるものの,開始以降はゲーム内で確認する手段がないことや,一部の条件についてはそれ単体では特定できず,別メニューの情報と併せて確認することが必要になっています.

一方で,それらを取り逃した場合でも,後から章ごとにやり直すことができるため,取り返しのつかない要素とはなっていません.
しかしながら,再度プレイする場合には,その章の冒頭からクリアまでの全てをプレイする必要があります.
勿論,スキップ機能は搭載されているので,一度読んだ会話,もしくは全ての会話をスキップすることが可能です.

しかし,ストーリー中の選択肢の回答や捜査,潜入パートはスキップすることができず,捜査については潜入するための一定条件を満たすこと,潜入においてはボス戦まで終える必要があります.
従って,サイドストーリー解放のためにはある程度の作業感を伴うプレイが必要となり,全てのサイドエピソード解放には一定のハードルが待ち構えていると言えます.

勿論,章によってはさほど時間がかかるものでもないため,この点に特化して本作のウィークポイントとするにはかなり弱いですが,一方で,ストーリー全般を通して丁寧で親切な進行でもあるため,このあたりは何らか別の形での救済措置があってもよかったのではとも感じます.
ただ,やりこみ要素として,そして全てを解放した際の達成感等の演出にも繋がっているとも考えられるため,便利であることが正義とは言いません.
しかし,本作全体から見ると,少しアンバランス感が見え隠れするかなという印象です.

 

さいごに

ということで以上,良い点,悪い点についてまとめさせて頂きました.

良い点でも述べましたがADVとしては2D関連のパートの完成度が非常に高く,本当に素晴らしいゲームなのですが,おそらく敬遠されてる要因もおおよそ検討がつきますし,そもそもADV自体がそこまで需要が高いかというとそうでもない,しかし,それでも尚,新規IPとして本作をリリースするという,その心意気はかなり男前さを感じます.

再度念押しでお伝えしますが,女性向けのゲームではないですし,そのような具合も特段感じる場面もありません.
しいて挙げるとすれば,サウナに入るシーンや温泉に遭遇するシーンはあります.
が,サウナは着衣ですので,FE風花雪月と変わりませんし,温泉も体の一部を付ける程度で,露出の作画もありません.

一方で主要キャラが男性のみである意義はしっかり感じられますので,CERO Cの範囲であれば,誰でも気兼ねなくプレイできるアドベンチャー作品と言えますし,ストーリーも王道でシンプルながら奥深く,ADVの入門としても絶妙だと思います.

ちなみに,2021年のベストゲームを選ぶゲームアワード2021では,アドベンチャー部門の最優秀賞を受賞しており,2021年のNo1 ADV作品となっています.
また他にもシナリオ部門,ルーキー部門にもノミネート,声優部門にも主役のうち1名の方がノミネートされています.
受賞,ノミネートは発売から約一年以上経過後ではありますが,これを一つのきっかけに,今後もジワ売れしてほしいなと思いますし,この記事を見て気になった方は体験版も配信されているので,是非遊んでみてください.
本作を遊ぶ人が一人でも増えると嬉しいなと思っています.

ということで今回は以上となります.
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それでは読んで頂きありがとうございました.

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